アルダブラゾウガメ玄の生活 ― 気は心と体をつなぐもの

整体生活・野口整体と生きることをひとつに

春の身体と病症の経過

 1月22日は旧暦のお正月。月が暦の基準だった時代、15日は満月と決まっていた。それで1月15日が旧正月だということになっていたが、太陽暦の今は1月15日と月も離れてしまったという。今日が元旦で新月の日である。

 旧暦だがお正月らしいことをしてみようと夕飯にすき焼きを食べた。名古屋では、大晦日にすき焼きを食べるのが一般的だそうだ。私の師匠(名古屋出身)が食べていた記憶はないが、名古屋風にして先生を懐かしんでみた。

 その後久しぶりにそば粉のパンケーキ用のスターター(元種・イーストのゆるい培養生地で翌日そば粉と小麦粉、牛乳などを入れる)を仕込んだ。これは私のお気に入りで、ベーキングパウダーではなくイーストを使うのがポイントだ。でも寒いから発酵に時間がかかる。

 そば粉を使うというとフランスのガレットというクレープが有名だが、以前厚焼きクッキーもそば粉のクレープも「ガレット」と言うのはなぜかと思って調べたら、フランス語でガレットというのは「丸く焼いたもの」というざっくりした意味だと知って驚いたことがある。フランス語って緻密なようで大雑把なところもあるんだな…。

 ガレット以外にもヨーロッパやロシアにはそば粉を使う粉もの料理が意外とあって興味深いが、ライ麦や蕎麦はやせた土地や寒冷地でも育つ大切な穀物だったのだろう。イタリアではパスタにもそば粉を入れるようだ。

 ちょっと脱線したが、先日「発熱した後、微熱が続いている」という相談があり、「熱が下がる前に汗をかいたか」と聞くと「汗が出なかった」とのことだったので急遽個人指導をすることになった。

 このように経過が滞っている時は手を入れて、本来の自然な流れに戻るようにしていく。野口整体というと風邪を引いても薬を飲まないとか病院に行かないとか、何もしないで放っておくようなイメージを持たれていることが割と多いが、そうではないのだ。

 整体で病症の経過を教えるのは、指導者が「経過できる体の状態か」「経過がスムーズかどうか」の見きわめ(観察)と指導ができること、本人に病症についての一定の理解があることや普段から整体生活に意識を向けていること…といった基盤があってのことであり、やみくもに薬を飲むな、病院に行くな、などと言っているのではない。

 来年度には、新型コロナウイルス感染症の扱いが変わり、インフルエンザと同じ扱いになると報道されている。今後も新型コロナウイルスは変異を続け、亡くなる人もいるのだろうが強制終了するわけである。今まで何だったんだという気もするが、やっとそういう時が来たのだとも言える。

 振り返って思うのは、病原となるウイルスがどのようであれ、人間の体がウイルスの侵入に対して行うことは、自然の経過をたどる人であれば、あまり変わらないということである。ウイルスの侵襲を受ける個々の体に、重症化するかしないかの条件があるのだ。

 また、中枢神経が侵襲を受けること、神経系に後遺症が出やすいことなどが新型コロナウイルスの特徴だと言われているが、これは現代人の体の問題も考えられる。

 そして、免疫力アップというワードが注目され、いろんな食べ物やサプリメントが話題になったが、重症化する人は免疫の過剰反応が原因であることが多いということも忘れてはならないだろう。防衛と攻撃だけで健康が保たれているわけではないのだ。

 こうした問題のすべてが、野口整体の病症経過という考え方の中には含まれている。ことに今、風邪を経過することは春の体になっていく準備でもある。今回、病症経過を手伝うことで私自身も認識を深めることができたように思う。

 これから「今年の寒さは 記録的なもの 凍えてしまうよ 毎日吹雪吹雪 氷の世界」 (井上陽水「氷の世界」)という歌詞を思い起こすような天気予報となっているが、もう体は春に向って動き始めている。体が乾きやすい状態は今も続いているが、初春の時期は水を飲むようにしたい。