前から読みたいな、と思っていた松本俊彦の本をついに読んだ。
先日のギャンブル依存症関連のセミナーでも松本医師の著者は販売されていたが、この「誰がために医師はいるークスリとヒトの現代論」(みすず書房)はなかったのが不思議。
みすず書房でこういう本出すのかと思うくらい面白かった上、松本先生自身とこの間の講演がより深く理解できた。お得な本である。
依存症関連の患者は入退院を繰り返すことが多いが、依存症は快感を求めてというより自己治療の手段であるという松本先生の観点に照らすとそれがよく分かる。
それに松本先生、レゲエ好きだったとは…。ダルクの施設長に誘われ、入所者のみんなと一緒に レゲエのフェスに行く話が心に残った。遊びか依存症の回復には必要だという施設長の考えがすてきだ。
レゲエと言えば、かのボブ・マーリーの名曲Redemption Songには、
Emancipate yourselves from mental slavery
No one but ourselves can free our minds
(精神的な奴隷状態から自分を解放するんだ、自分を自由にすることができるのは自分以外にない)
という詞がある。
フェスにはアルコールや大麻その他の物質がないと楽しめないヒトもいるけれど、その中にあっても音楽を純粋に楽しんで、踊って、頭を空っぽにして…というのができれば、リカバリーしていけるのだ。
依存症から回復するための施設ては、回復した当事者がスタッフとなって支援することが多い。精神保健福祉でのピア(仲間)サポートは依存症施設から起こったと言っていいだろう。
福祉という立場だと管理的な態度になりやすく、ことに医療とのつながりが強い精神保健福祉だと規則正しい生活とか、症状がないこととか、逸脱などの問題がないことなどに関心が集まりやすくなる。松本先生も大丈夫かと思ったそうだ。
自分を解放していくというリカバリーの在り方は、こうした依存症施設の元当事者からもっと学ばなければならないと思う。
松本先生は「人間とはクスリを使う動物だ」、「困った人は、困っている人」「人間が信じられないと物質に頼る」
などの名言をこの本の中でいくつも残している。先生が精神科医ななっていく過程も興味深く、久しぶりに面白い本読んだな…と思える一冊だった。
誰がために医師はいる | クスリとヒトの現代論 | みすず書房