アルダブラゾウガメ玄の生活 ― 気は心と体をつなぐもの

整体生活・野口整体と生きることをひとつに

物質と精神

 今日は思わぬ空白日。昨日近くの八百屋で、直径7㎝くらいの小さな地元産玉ねぎの安売りをしていたので、それを丸のまま野菜スープで煮ておいた。一晩おいてこれを今朝の朝ごはんに。

この玉ねぎは本当に新鮮で、上の部分を切るとぶしゅ―っと泡が吹き出してきた。玉ねぎの血液みたいなものだろう。これも生きているのだと、はっとした。大切に食べよう。

 そして今日はそば粉のパンケーキを作ることにした。ロシアにブリヌィというクレープとパンケーキの中間のようなものがあって、それに近づけてみようと思い、生地はゆるめにして寝かせ、焼いてみたらなかなかおいしくできた。牛乳を使うように指定してあるレシピが多いが、そば粉の場合、半分は水にする方がふんわりしておいしい(イースト使用の場合)。

 こうしてお腹も落ち着いたところで、今日書いてみたいことは以下の新型コロナウイルスについての記事についてである。

新型コロナウイルス感染症や後遺症で表れる中枢神経症状について、慶応大の岡野栄之教授(神経科学)らの研究チームは、脳内で不要な物質を取り除く作用がある免疫細胞(ミクログリア)がウイルスに感染し、それに伴って中枢神経が傷んで発症している可能性を、人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使って確認したと発表した。

毎日新聞

 新型コロナウイルス感染症そのものは多くの人にとって死に直結するような病気ではないが、私がちょっと不気味さを感じたのはこの中枢神経に侵入するという点だった。

 他のウイルスも中枢神経に入ることはあるが、そうなったら多くの場合死に至る。しかし新型コロナウイルスは中枢神経に入った後、神経症状を長引かせる傾向があるのだ。

 これはウイルスの特性なのか、現代人の身体の問題(鈍りと大脳疲労)なのかという疑問があったのだが、おそらく両方があるのだと思う。現代人の身体に適応したウイルス、と言えるかもしれない。

野口整体創始者野口晴哉は、講義の中で「ウイルスや細菌が身体に入ってきた時に出る症状の多くは、それが中枢神経に入らないようにするために起きている」と言っている(これは野口晴哉独自の考えではなく医学的にも合致する考え)。

先の研究者は「ミクログリアが放出する物質の働きを抑えたり炎症を抑えたりする薬剤が、後遺症の治療につながるかもしれない」と述べており、原因となる物質を特定して治療薬を開発するというのが近代医学の方法である。近代医学はこうした感染症との闘いによって発達してきた歴史がある。

 しかし、病気の背景に解熱鎮痛剤を始めとした、症状を抑えるための薬を使い過ぎていること、抑うつ傾向や脳が休まらないことで体がウイルスの侵入に正しい反応ができなかったり、免疫系そのものが訓練されていないために過剰反応したりということがあるとしたら?

 今、難病とされている病気(治療法が確立していない)は、免疫の病気、神経の病気が多い。そしてもう一つは精神疾患であり精神、心と深く関わる領域だ。ユングが類心的(プシコイド)領域と言ったような、また整体的には潜在意識、心と体の間である。

 現代の病気はすぐに死ぬようなことはなく、寛解と悪化を繰り返しながら長い付き合いをするというのが多い。こういう病態で、物質的に原因を特定し、物質的に治療するというやり方によってすべて解決できるとは私には思えない。

 私は野口晴哉立川昭二という医療史家から「病気には流行り廃りがあり、時代と密接な関係がある」と学んだ。これは本当に大事なことで、立川先生は医学部の教授に「今度はどんな病気が流行るんですか」とよく聞かれると困っていた。そして野口晴哉の「今は癌が流行りだが、次には精神疾患が増えるだろう」という説に深い関心を持っていた。

 新型コロナウイルス感染症パンデミックでは、近代初頭にタイムスリップしたかのような気になったが、人類とは長い付き合いである感染症であっても、現代の病としての特徴ははっきりあるというところが興味深い。こういう点に関しては先日読み返したシュタイナーの『カルマ論』にも新たな発見があった。野口晴哉についても今読むと違う気づきがある。

 もうすぐ新学期が始まる。さらに広く、深く学んでいくことにしよう。