アルダブラゾウガメ玄の生活 ― 気は心と体をつなぐもの

整体生活・野口整体と生きることをひとつに

己れに背くもの

 先日、円形脱毛症になった人の話を聞く機会があった。男の人で髪も沢山ある人なので、髪をかき分けなければ分からないのだけれど、やはり気になるもので、見ると胸が痛んだ。

自分でできる手当て法も教えたが、こういうことは何と言ってもストレスを切り離して考えることはできない。本人もそれは分かっていて、頭では片づけたつもりであっても「体は正直だ」としみじみ言っていた。

 最近、円形脱毛症は自己免疫疾患として考えられるようになり、自身の免疫系が毛根を攻撃してしまうことが分かってきたそうだ。

医学的にはストレス要因だけではないという意味で出て来た説なのだが、自分で自分を攻撃してしまうという状態には、感情の内攻がかくれていることが多い。怒りなどの攻撃的な感情が内攻して、意図せずに自分を攻撃(自己破壊)するようになってしまうのだ。

 ストレスの対処法とか、人間関係の対処法とかいうものはたくさんあって、教えてくれる人も大勢いるし、こうした方が良いと考えることは自分でもできる。しかし、心と体の緊張を弛めることなくそれを適用しようとしても、実行は難しいし人間関係も変わらない。

 野口晴哉は晩年、講義の中で「本当の健康は、人間の心を指導しなければ得られないものだということを知りました」(『月刊全生』)と言っている。しかしそれは「どうすればよいか」を教えるということではないのだ。

 まあともかく、円形脱毛症についてもう少し勉強してみようとも思っている。

 

己れに背くもの

人間の心の中には、いつも、自分を丈夫にしようとする心のほかに、自分に背いて自分を駄目にするように働く心がある。

自分に背いて自分を壊すもの、破壊へ導くもの、それは心の中にも体の中にもある。もっと極端に、自分を死なせようとする方向に動くことがある。

人間というものの中には、お化粧してでも立派に見せようとする働きがあるかと思うと、その逆に、意識してのそういう自分に背いて、それを壊していこうとするものがある。

普段我々が大事な要件を忘れたり、他人の大事なものを壊してしまったりすることの中にも、反抗の精神や、反感の潜在意識が多分にあるのであって、偶然起こる現象は殆どないともいえる。

それが自分に背くこと、自分を壊すということであって、敢えてそれをやる要素は誰の体の中にもある。

誰でもみんな、自然に健康になる方向にだけ心が働くのなら、潜在意識教育など要らないのだが、健康に生きることに背こうとするもの、死に至ろうとするものが誰の潜在意識の中にもある。

野口晴哉