アルダブラゾウガメ玄の生活 ― 気は心と体をつなぐもの

野口整体を探究・実践する「整体生活」について

50代を長くする

ゲゲゲの世界 

 数日前、水木しげるの『古代出雲』(角川書店)という漫画を読んだ。やっぱり期待を裏切らない面白さだった。私は、あまり人に話したことがないけれど、じつは私は子どもの時から水木しげるの漫画が大好きで、霊界への入り口がないかと探したり、空想したりしていた(変な子ども…)。

幻視をリアルに表現したような、濃密な自然界を描いた背景、霊魂や妖怪と人間の関係などに、相当深い影響を受けていると思う。

 水木しげるは娘に「手塚先生の漫画は夢がある。でもお父ちゃんの漫画は夢がない。」と言われ、「バカヤロー、俺は現実を書いているんだ!」と言ったそうで、あの世界観は水木しげるに観えている現実なのだ。

 まあ、水木しげる野口整体はつながりが全くないが、漫画つながりで言うと、以前、野口晴哉先生の、白土三平にはまった小学生の話を月刊全生で読んだことがある。

 ある時、野口先生は、母親から「小学生の息子が漫画ばかり読んで勉強もせず夜更かししている」という相談を受け、その子に「君、漫画ばっかり読んでるの?」と言った。するとその子は「先生、読んだことあるの?漫画は面白いよ、勉強はつまらない」と答えたという。

 そこで野口先生は、その子がはまっている白土三平を読んでみたところ、本当に面白くて、お母さんの読む三文小説よりずっといい内容であることが分かった、という話だ。その後、その子にどういう指導をしたのかは忘れたが、漫画浸りではなくなったようだ。

 あの野口先生が、子どもに反論されて実際に漫画を読んだことにも感心したが、その後、古い月刊全生を見ていたら、おそらく白土三平の御家族の方が『カムイ伝』を寄付したことが載っていて、それにもびっくりした。

 野口先生本人は、15才で道場を開くという天才であった故に、子どもの時間が短くなってしまったことは否めない。現役生活は普通の人よりもずっと長いし、仕事と時間の密度は計り知れないが、60代で亡くなったのは、子どもの時間が短かったこともあるかもしれない。

 野口先生は晩年、日本が長寿社会に入った頃、長く健康を保つためには「50代を長くする」ことが大切だと言っている。

 50代なんて言うと、もう晩年気分で終活のことまで考え始める人がいるが、それは確実に30代とは違う体の変化を実感するからかもしれない。

 でも、一生が長丁場となってきた今は、20歳に成人式があるのと同じように、発達段階として50歳を考える必要があるのではないかと思う。

 それは、実社会に入る20歳の成人式とは違う、もっと精神的な意味の発達、もっと言うと死や霊性といった世界に接近するための、心の準備段階だ。

 私自身の体を考えても、生物的には(つまり♀的には)老いてきたと思うけれど、体の構成物質が変わりつつあるような気がする。物質的な成分でできていた体が、気というか、もっと透過性のある素材に変わっていくような感じだ。それは死に近づくということなのかもしれないが、これから必要な体の変化なのだと思う。

 つまり、いつまでも若い時と同じように運動したり、頭を使ったりするのが元気とか健康なのではなく、違う健康生活がある、それが50代から始まるということではないだろうか。

 水木しげるは、『古代出雲』を書いた理由として、60歳ぐらいから古代人らしい若者が夢にしばしば出てきて、滅ぼされた古代出雲人の無念をわかってほしい、古代出雲のことを描いてくれと頼まれたからだといっている。

 体があって、この世を生きている人間にしか、この世での仕事はなしえないので、体をもたない古代の霊がそれを訴えに来たのだ。

 水木しげるは20代からその気が大いにある人なので、一般化はできないが、40代でやっと売れっ子漫画家になった頃には「妖怪いそがし」に取りつかれて、漫画量産に追われていた忙しい時代もあった。しかし49~51歳で、「妖怪いそがし」と縁を切り、仕事をセーブするようにしたという。

 日本の霊とか魂の世界というのは「思い」の世界で、心の世界が深まっていなければその声は聴こえない。本当に、潜在意識の世界が霊の世界とつながっていて、霊の思いを生きている人間が受け取ることが、死者の霊を慰めるということなのだと思う。

 だから、思いを受け止め、理解することができるようになるというのが、50歳で目指す発達段階なのではないだろうか。そういう心と体を生きている間維持することが、50代からの健康生活に必要なのだと思う。若い時も、年をとっても、自分中心になってしまうのが人間なのだけれど、きっと野口先生は、15歳の時からずっとそうしてきたのだ。私の師匠の修行も、そういうことだった。

 なんだか不思議なことを、とりとめもなく、思わず書いてしまったが、もうすぐ夏だということで?ご勘弁いただきたい。

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妖怪いそがし(水木しげる)人間がこの妖怪に憑依されると、やたらに落ち着きがなくなる。しかし不快な気分ではなく、忙しく動き回ることで、なぜか安心感に浸ることができ、逆におとなしくしていると、 何か悪さをしているような気持ちになってしまう。