アルダブラゾウガメ玄の生活 ― 気は心と体をつなぐもの

野口整体を探究・実践する「整体生活」について

骨格筋の生理と心理

要求と運動系

 先日、知人宅で「立ちたい要求はあるがまだ立てない赤ちゃん」に会う機会があった。その子はおすわりしたまま楽しそうに飛び跳ね、お尻が床からぽんぽん浮いていて、この運動をほとんど骨盤部(仙骨部)の力だけでやっていた(大人にはできないと思う)。

 そのように腰が自然に鍛えられる過程を経て、立てるようになるのだろう。私はその力強さに驚き、人間に「立つ」という要求が出てくる時は、まず「腰から立つ」、それが手足に連動するのだなとつくづく感心してしまった。類人猿が初めて二足で立ち上がる時も、「腰から立った」に違いない。野口晴哉先生の言う「真ん中の力」、「もう一本の足」である。

 でも、大人になってみるとどうだろう。頭で体に命令して「重い腰を上げる」ようになっていないだろうか。手でよいしょ、と体を持ち上げたりして・・・。

 野口先生の著書に、思春期の潜在意識教育についての内容をまとめた『思春期』(全生社)というのがある。整体を学び始めた時、これをよく読んだものだが、最近また読み返している。

 その中に、25歳の統合失調症(引用文中では精神分裂症。現在は使われていない病名)で入院した男性についての相談に答えた文章(月刊全生の記事)があり、随意筋についてこんな記述があった。

先入主的な偏見

私達の体は胃でも腸でも、いつも絶え間なく無意識の運動を繰り返しているのです。しかし随意筋には特殊なブレーキがついているのです。そのために随意筋は意識して動かすことが出来るのです。だからお酒を飲んで酔払うと、そのブレーキが緩んできて活元運動と同じような無意識の動作になってくる。

 随意筋には錐体路系という一種のブレーキがあって、それが運動系にゆく無意識運動を抑えているから、意識運動が出来るのです。

 欲求不満が亢まって錐体路系だけでなく、潜在している心につながるブレーキまで毀れてしまって、心の中にあるものが全部率直に出てしまうのです。・・・人間の欲求、欲望などは、ある程度抑えつけた方が安全です。だから抑えつけること自体は異状ではない。ただ抑えつけ過ぎてブレーキを毀してしまうと精神分裂症状を起こす。

 超臨床的なので誤解のないように付け加えると、今回、私が焦点を当てたいことは統合失調症ではなく、「随意筋にブレーキがついている」というところで、ここについて考えてみたい。つづく。

(註)運動系 神経系のうち、全身の運動(動作)に関わる部分のこと。運動系は、随意運動を司る錐体路と、その他の錐体外路性運動系(錐体外路系)に大きく分けられる。