今度新たになった講座は平均化体操の会ではなく、平均化訓練講座という名前だった。失礼しました。
ところで今日、野口晴哉先生の資料を見ていたら、「楷書と行書」というお話が出て来た。これは先生の講座の中でのお話で、野口先生はこんな風に言っている。
〇楷書と行書
「楷書 行書 草書」
・・・行書というのは楷書をくずしたものです。私の普段やっているの(操法)は行書をさらにくずした草書的なものです。
・・・楷書の時にはこちらのやり方が主になっている。行書の練習では相手の体の動きが主になって行く。
・・・やり方になった場合には必ず自分のやり方をまず覚える。そして今度はそれを相手の体の動きに合うように、みなさんの知恵で組み立て直して使う。
これはお腹の操法についての喩えで、中略が多くて分かりにくいかもしれないが、楷書というのは触る処と構えを覚えること。実際に相手の呼吸・体に合わせた操法を行書・草書と言っている。
まず楷書を自分で覚える必要があるけれど、相手がある場合は行書・草書でないと実用にならないし、自分だけの一方的なやり方では相手の力を封じてしまう(悪くすると毀してしまう)・・・というお話だ。
先生がこのお話から名付けたのかどうかは知らないけれど、平均化体操でも楷書・行書・草書と言う。楷書体は一人、行書は二人、草書は二人以上でやる(→こういう区分でいいのかあまり自信がないが、一応)。動き方の変化の仕方も野口先生のお話に似ている、と思った。
これを書いていたら「Show kindness to your neighbors」という言葉を思い出した。これは古い話で恐縮なのだけれど、1997年に行なわれた第一回のフジロックで聞いた、Red Hot Chilli Peppersのアンソニーの言葉だ。
当時、私はロックファンというわけではなかったが、先輩がイベントを主催した会社で働いており、チケットが浮いていたので、誘われて偶々行ったのだった。
しかし前夜から初日にかけ台風の只中となり、進行も会場運営も何から何まで全て最悪で、寒くて全身びしょ濡れで雨宿りする所も食物もなく、音響も悪く、会場は殺気立ち騒然としていた。
すると、アンソニーの怪我のため来日が危ぶまれていたRed Hot Chilli Peppersが最後に出てきて、彼は観客に向かい、真剣に「Show kindness to your neighbors!」と言ったのだった。
私は別にファンでもなかったし、疲れ切っていたから音楽はろくに覚えていない。ロックフェスにもその後行ったことがない。でもこの時の彼と彼の言葉だけは今でも心に残っている。
言葉そのものは、英語ではありふれた慣用表現らしいけれど、過激な言動とパフォーマンスで知られていた彼の内面を垣間見たような気がした。(若い人はRed Hot Chilli Peppers知らないのかな?そういう人はYouTubeなどを見てほしいが、そんなことを言ったなんて信じてもらえないかもしれない・・・)。
平均化訓練は、向かい合って、または隣の人と手を合わせて行う。これには特有のフラットさと明るさがあって、「Show kindness to your neighbors」というあの時の言葉を不思議と思い出す。
手を合わせる人に優しい気持ちになること、そして相手の力を借りることによって、自分の中から良くなって行く力が引き出されることを、大切にしたいと思う。
(注・平均化訓練講座とRed Hot Chilli Peppersは全く関係ありません。)